【著しく短い工期とは?】建設工事における工期の基準について解説
建設工事の注文者は、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはなりません。
これは、建設業従事者の長時間労働を改善し働き方改革を促進すること、工事現場における事故の発生を防止することを目的とした規定です。
ここでいう「著しく短い工期」に該当しないためには、どれくらいの期間が必要なのでしょうか。
この記事では、建設工事における工期の基準について解説していきます。
工期に関する基準
国土交通省の中央建設業審議会が作成した「工期に関する基準」には、工期を設定するにあたって考慮すべき事項が記載されています。
これによると、次の事項について考慮が必要とされています。
- 工期全般にわたって考慮すべき事項
- 工程別に考慮すべき事項
- 分野別に考慮すべき事項
それぞれ確認していきましょう。
工期全般にわたって考慮すべき事項
工期全般にわたって考慮すべき事項は、次のとおりです。
- 自然要因(降雨日、降雪日等)
- 休日・法定外労働時間(時間外労働の上限、週休2日の確保等)
- イベント(年末年始、夏季休暇、GW、地元の催事等)
- 制約条件(鉄道近接、航空制限などの立地に係る制約条件等)
- 契約方式(設計段階における受注者の工期設定への関与等)
- 関係者との調整(施工前に必要な計画の地元説明会、工事中における地元住民や地元団体からの理解を得るために要する期間等)
- 行政への申請(新技術や特許工法を指定する場合、その許可がおりるまでに要する時間等)
- 労働・安全衛生(労働安全衛生法等の関係法令の遵守、安全及び健康の確保に必要な期間等)
- 工期変更(当初契約時の工期の施工が困難な場合における工期の延長等)
- その他(施工時期や施工時間、施工法等の制限等)
工程別に考慮すべき事項
建設工事の工程は、「準備」「施工」「後片付け」に分けられます。
それぞれの段階によって、考慮すべき内容が定められています。
準備
- 資機材調達・人材確保
- 資機材の管理や周辺設備
- その他(現地の条件を踏まえた詳細な施工計画の作成に要する時間等)
施工
- 基礎工事
- 土工事
- 躯体工事
- シールド工事
- 設備工事
- 機器製作期間・搬入時期
- 仕上工事
- 前面及び周辺道路条件の影響
- その他(建設発生土の処理や運搬に要する時間等)
後片付け
- 完了検査
- 引き渡し前の後片付け、清掃等の後片付け期間
- 原形復旧条件
分野別に考慮すべき事項
「住宅・不動産」「鉄道」「電力」「ガス」の4分野について、考慮すべき内容が定められています。
住宅・不動産分野
- 新築工事
発注者が定める販売時期や供用開始時期 - 改修工事
施工不可能な日程及び時間帯等の施工条件、作業効率 - 再開発事業
保留床の処分時期、既存店舗の仮移転等に伴う補償期間
鉄道分野
- 新線建設や連続立体交差事業等の工事
新線の開業時期、都市計画事業の認可期間 - 線路や駅等の改良工事
列車の運行時間帯の回避等 - 線路や構造物等の保守工事
異常時対応や緊急工事を含めた通年対応等
電力分野
- 発電設備
工事進捗に応じた各設備間の引き渡し時期等 - 送電設備
現場に応じた物資の輸送計画等
ガス分野
- 新設工事
機械設備の据付時期を中心とした工程の組み立て等 - 改修工事
既存の製造設備等への配管やつなぎ込み等
「著しく短い工期」の判断基準
「著しく短い工期」とは、これまで紹介してきた工期の基準と比較して適性を欠き、短く設定された工期をいいます。
これを一律に判断することは困難であるため、
- 過去の同種類似工事の実績との比較
- 建設業者が提出した工期の見積り内容の精査
などを行い、個別に判断する必要があります。
例えば、元請負人が、発注者からの早期の引渡しの求めに応じるため、下請負人に対して、一方的に当該下請工事を施工するために通常よりもかなり短い期間を示し、当該期間を工期とする下請契約を締結した場合などは、建設業法違反となります。