【建設業許可の要件⑥】「適切な社会保険への加入」について解説

建設業界では、法定福利費を適正に負担しない社会保険未加入企業が存在し、いざというときの公的保障が確保されず、これが若年入職者減少の一因となっていました。

また、適正に法定福利費を負担する事業者ほど競争上不利になるという状況が生じていたため、国土交通省において、社会保険の加入率を上昇させるための対策が行われてきています。

そして、令和2年10月に施工された改正建設業法により「適切な社会保険への加入」が、建設業許可の要件に追加されました。

これから新規申請をする場合はもちろん、今まで社会保険に加入していなかった建設業者が更新申請をする場合にも、適切な社会保険に加入する必要があります。

この記事では、「適切な社会保険」とは何なのか、解説していきます。

「適切な社会保険」とは

建設業許可における社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険をいいます。

社会保険への加入義務があるにもかかわらず、加入していない場合は、許可を受けることができません。

この加入義務は、法人と個人事業主の場合で異なります。

法人の場合

健康保険、厚生年金保険については、法人であれば原則として適用事業所となります。

雇用保険については、1人でも常用労働者がいる場合は適用事業所となります。

つまり、1人でも常用労働者がいる場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険すべてに加入しなければなりません。

また、役員のみで労働者がいない法人は、雇用保険が適用除外となり、健康保険、厚生年金保険に加入義務があることになります。

個人事業主の場合

個人事業主で5人以上常用労働者がいる場合は、原則として健康保険、厚生年金保険の適用事業所となります。

雇用保険については、1人でも常用労働者がいる場合は適用事業所となります。

つまり、一人親方など、労働者を使用していない場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険いずれも加入義務はありません。

労働者が1~4人の場合は、健康保険、厚生年金保険が適用除外となり、雇用保険のみ加入義務があります。

労働者が5人以上の場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険すべてに加入しなければなりません。

「適切な社会保険」とは、加入義務がある社会保険のことをいうため、適用除外の社会保険については、加入していなくても建設業許可を受けることができます。