建設工事の請負契約書に記載すべき事項と契約締結の流れを解説
民法において、契約の内容は自由に決定することができ、口頭でも成立することが規定されています。
ただし、建設工事の請負契約に関しては、建設業法で内容が規定されており、書面により締結しなければならないこととされています。
この記事では、建設工事の請負契約書に記載すべき事項と契約締結の流れを解説していきます。
建設工事請負契約の内容
建設工事請負契約の当事者は、対等な立場で契約を締結するため、建設業法で定められた内容を記載した契約書に署名または記名押印をして、相互に交付しなければなりません。
契約書の記載事項は、次のように規定されています。
建設業法
(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項
出典:e-Govポータル
(https://www.e-gov.go.jp)
また、一定規模以上の解体工事の場合、建設リサイクル法により、これに加えて次の事項の記載が求められています。
- 分別解体等の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
- 再資源化等に要する費用
建設工事請負契約を締結する方法
建設工事請負契約の締結は、契約書に建設業法第19条第1項第1号から第16号の事項を記載する方法の他に、次の方法があります。
- 基本契約書を取り交わし、注文書・請書を交換する方法
- 注文書・請書の交換のみによる方法
それぞれの契約の流れを確認していきます。
基本契約書と注文書・請書による方法
基本契約書には、第5号から第16号の事項を記載し、当事者の署名または記名押印をして相互に交付します。
注文書・請書には、具体的な取引内容である第1号から第4号までの事項を記載します。
なお、注文書・請書に記載されていない事項については基本契約書の定めによるべきことを明記しなければなりません。
また、注文書には注文者、請書には請負人の署名または記名押印が必要です。
注文書・請書のみによる方法
注文書・請書の交換のみによる方法の場合、契約約款の添付が必要です。
契約約款には、注文書・請書に個別に記載する項目を除き、第5号から第16号までの事項を記載します。
注文書・請書には、第1号から第4号までの事項を記載します。
なお、注文書・請書に記載されていない事項については契約約款の定めによるべきことを明記しなければなりません。
また、注文書には注文者、請書には請負人の署名または記名押印が必要です。